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  波に洗われてシャパシャパ。貝殻がコロコロ。背中の滴がツルリと落ちて、塩味のまじった缶ジュースに口をつけると、バラバラに脱ぎ捨てたビーチサンダルを波が誘い出す。

  向島と岩子島をつなぐ赤い橋のそばにウシガクチと呼ばれる小さな岩の島があります。潮の満ち引きによって姿を現したり、半分隠したりする島というよりは岩場ですね。それはなんだかお城のようで、大きな孤独な犬のようでもあり、小さな小さな砂浜を見守る灯台のようにも見えます。僕らの家族は夏になるとよくここで水遊びをします。広いビーチは他にたくさんあるのですが、人がわんさかと居たり、マリンジェットが飛び回っていたりするので、静かなこの場所へと逃げ込むのです。

  ウシガクチのてっぺんに子供と座り、いろんなことを喋ります。目の前に見える橋を渡るバイクがこの位置からだとちょうどヘルメットしか見えなくて、「ボーリングのボールが転がっていくみたい」と子供が大笑いします。そうしている間にも夏は確実に僕らの体を焦がしていきます。

  まだまだてっぺんから飛び込むのに躊躇している子供の姿を笑いながら、それでも彼の成長にじんわりとした気持ちになってしまいます。泳げなかったいつかの夏。友達が引っ越していったいつかの夏。誰にもある夏の想い出を、この岩の島はそばでじっと見守ってきたのです。これからも……。

文・松田滋樹
  


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