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第五場 練習風景より |
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鳳尾蕉軒の庭先の縁側に座って本を読む玉蘊。
尾道に帰っては見たものの、男を追いかけあげくに
捨てられた汚名の噂が噂を呼び安芸から備前あたりの
巷でのそれに、外を歩く事 が恐怖に変わってしまった
一家であった。
竹下はその傷ついた心を癒すのに懸命であった。
このままでは大変な事になると焦り、もう一度絵筆を
取らそうとする竹下。 |
何とか絵筆を取る事を承諾した玉蘊であったが、心のそこからの言葉ではなかった。
何気なく言った丁稚の言葉にふと自分を見つけた玉蘊は竹下に言付けをし、無心に絵筆を走らせた。
二日たっても玉蘊からは何も連絡が無く心配になった竹下は鳳尾蕉軒へ出向いた。
そこで見た物は玉蘊の生きた証しであった。 |
| 竹下 |
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食べていく為の絵ではなく、今生きている平田玉蘊の証しとして描くのです。
この世は、言葉で整理出来る程に単純ではない。
正解はすぐには見付らない物、可能な限りの自分の時々の到達地点を目指し、
にじり寄っていくしかないのです。貴方の生き方の言葉なのです。 |
| 玉蘊 |
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何故父は私達姉妹に絵を習わせたのでしょうか・・・
そうすればこんな苦しみも必要なかったのに・・・
絵とはナンなのでしょうか・・・私は何をしてきたのでしょう・・・
そういえばあの時・・・・・最初で最後の夫婦喧嘩・・・・ |
| 五峯 |
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玉蘊どうしたのか・・・辛いのか・・・悲しいのか・・・それとも心細いか・・・
案ずる事はないぞ、ひたすらに自分を信じなさい。
失敗して後悔するなんてもったいない。失敗したから何が必要で何が貴いかわかる。 |
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どんどん無駄をしてもかまわない、
と心のそこから思えるようになりなさい。
人は成功した数だけ
社会的に偉くなれるかもしれないけれど、
失敗した数だけ余裕が出てくるのも
どうやら事実のようだから・・・
あとは無心になる事だよ・・・・
ええんじゃ、父さんの子じゃけぇ・・
ほら、私が舞うぞ・・みていなさい。 |
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おはよう御座います。玉蘊さん・・・
お留守ですか・・・失礼しますよ・・・
ごめんなさいよ・・・
これは・・・ナンという絵だ、玉蘊さん |
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紙本著色 軍鶏図 衝立一面 浄土寺蔵 |
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紙本著色 桐鳳凰図 襖三面 慈観寺蔵 |
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山陽と玉蘊は時に詩会で
会うことはあるが、
少なくとも人前では
何もなかったかのように
淡々と過ごしている。
そして月日は流れる事二十年。 |
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丁稚と竹下は海岸沿いを歩き、橋本の別宅、爽頼軒に向かって歩いていた。
前日に皆の手元に山陽の訃報が届いた時だった。
竹下は心の中で山陽に変わり自分が玉蘊の支えにならなくてはと感じていた。
そして竹下は尾道の豪商としてすべき事を考え始めた。 |
| 玉蘊 |
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やはり旅たたれたのですね。私の所にもちゃんと来て下さいました。
こちらから行けば居なくなる人なのに・・・いつも御自分でさっさと決めてしまわれる・・・・ |
| 竹下 |
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早すぎた、実に早すぎた。 ・・・玉蘊さん私は道すがら色々と考えました。
このご時世多くの方が飢えで亡くなっている。
山陽先生ももしや食べるものがあれば治ったかもしれん。
もう尾道から死人を出すのは私としては辛すぎる。
聞けば大三島の人が薩摩の芋を手に入れたそうじゃ、
薩摩はその芋で天保の飢饉を乗り切れそうだとも聞いてる。
・・・藩外持ち出しご法度のところ、
ワザト蔵を開けて寝たフリをしたその隙に持ち出したとか・・・
ここは一つ橋本竹下、
今動くべきだと慈観寺御本堂の再建に取り掛かろうと想うとります。 |
| 竹下 |
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なぁに、この橋本の財、この時の為に茶漬けで過ごして来たんじゃ・・
これが尾道人、これが尾道商人。
まぁ見ててみいゃ、一人も飢え死にさせんぞ、
それで玉蘊さん、その本堂に運の向く絵を描いてくれんか。尾道が栄えるようにのぉ |
| 玉蘊 |
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竹下様、・・・竹下様それではお願いがございます。
山陽様のこともあります。私に鳳凰の絵を描かせてください。 |
| 玉蘊 |
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金の下地に天に舞う鳳凰。
鳳尾蕉軒は蘇鉄の葉を鳳凰の尾に見立てた言葉、
そして私の大切な古鏡に描かれている弧鸞(こらん)は、
孤独な鳳凰としての意味も御座います。
鳳尾蕉軒に山陽様がこられ古鏡をお見せしたときに、
もうこれしかないのです我が家には・・・と申しましたら、
古鏡題詠詩を皆で作ろうといってくださいました。
章さんの頼みならばと・・・ |
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自由に何処えでも、
どんな時代にでも飛んでいける不老不死の鳳凰図を描かせて下さい。
そしてやっとそのことで、私の絵筆で、私のやり方で山陽様と一つになれます。 |
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第七場 練習風景より |
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完成した本堂にはめられた襖絵。
飢饉もしのげ尾道では
誰一人飢えで死ぬ事は無かったという、
その一大事業が終わった爽頼軒から
千光寺へのみちのり・・・ |
| 竹田 |
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うんうん・・・元気そうじゃ・・・最近絵に張りが出てきたともっぱらじゃ |
| 竹下 |
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竹田様・・・尾道に滞在され100日が過ぎようとしていますが、
毎日花瓶に挿した花をこうして集められ、
千光寺は玉之岩の岩陰に埋めたいとのお申し出・・・
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| 玉蘊 |
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何か深い意味が在りそうですね。わびさびのような・・・ |
| 竹下 |
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そうよなぁ・・・この年にして気でもふれたかと想われたかな・・・ |
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時は過ぎ玉蘊も六十九歳で他界した。
其の時竹下は七十三歳。
苦楽を共にしてきた竹下と丁稚もまた
齢をかさね今思うことは・・・・ |
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第八場 練習風景より |
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| 竹下 |
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エイコウ碑を作ってしばらくして竹田様もお亡くなりになった。
まるで御自分の死期を知っていたかのようにじゃナァ・・・
玉蘊さんもソロソロ三回忌の頃じゃ。
あの方も富士を描きそこに七十歳と記しはしたが六十九歳でなくなられた・・・・
そのお墓には平田章・・・
墓碑名は「平田玉蘊」、位牌は戒名の裏に「平田章(あや)」とあり、
誰それの妻、或いは娘ではない。
一人の女性画家としての生涯を終えたのじゃ。 |
| 丁稚 |
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あちらの世界でお二人はどうなさっているのでしょうね・・・ |
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色は匂へど 散りぬるを
わが世 誰ぞ 常ならむ
うゑの奥山 今日越えて
あさき夢みし 酔いもせず
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| ◆公演日時 |
平成17年11月26日(土)
会場16:00 開演16:30
平成17年11月27日(日)
会場18:00 開演18:30 |
| ◆会場 |
| JR尾道駅前(しまなみ交流館)テアトロシェルネ |
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1・2階席
2,500円(当日券2,800円)
3階席
1,500円(当日券1,800円)
学生(全席共通)
800円(当日券1,000円)
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| ◆チケット取り扱い |
尾道市観光文化課
TEL:0848-25-7366
テアトロシェルネ1F
観光コーナー
TEL:0848-25-4078
NPO法人
尾道てごう座事務所
TEL:0848-46-3552 |
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