2004年8月号
瓦斯灯ノ明カリノ下デ

瓦斯灯が数本、尾道駅前の桟橋にたっている。

其の夜 大学の教え子四人と、其処に立った。

大潮の為か、尾道水道の潮の流れは速かった。
其の潮の流れに立ち向かう船は、悪戦苦闘し、
其の潮の流れにのる船は、魔法を掛けたかのように、
入り江に吸い込まれていく。

二十歳前後の彼女達に、
瓦斯灯の炎の明かりは、 瞬間だが、
大人と子供の顔を照らし出す。

一人の学生が言った。
「先生、素敵な詩を私知ってます。確かこんな詩でした・・・」

写真家 村上宏治
夜のパリ プレブェール
三本のマッチを 一本ずつ擦る 夜のなかではじめは、きみの顔を 隈なく見るため
つぎは、きみの目をみるため 最後はきみのくちびるを見るため
残りのくらやみは 今のすべてを想い出すため きみを抱きしめながら。

瓦斯灯の、揺らめく炎のぬくもりにやがて
一人の女性へと変わる予感に溢れ四人の学生達は輝いていた。
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