―仏典に親しむ― 般若心経 入門(一)

 般若心経は宗派を越え国境を越えて、仏教徒が最もよく唱えるお経です。
 インドの古い言葉であるサンスクリット語(梵語)で、あるいはチベット語で、そして中国語、韓国語でも唱えられています。私達日本人は、玄奘三蔵法師訳の漢訳を読んでいます。(呉音で発音)
 般若心経の正式名(経題)は、般若波羅蜜多心経、あるいは頭に摩訶を付けます。(真言宗)
 般若とは梵語のプラジュニャーの音訳(発音される音に似た漢字を当てる)で、知恵という意味です。波羅蜜多はパーラミータの音訳で、彼岸(悟りの世界)に到るという意味です。つまり般若波羅蜜多とは、知恵によって悟りの世界に至るという意味になります。また、知恵の完成とも言う事ができます。
海暢長老  写真:村上宏治
 心経の内、心とは梵語でフリダヤで心臓の事ですが、精髄、精要を意味します。経はスートラで、元々は縦糸の事ですが、転じて教え、あるいはそれらを説いた文書、本、つまり聖典の事です。
 経題の頭に付く摩訶とは、マハーの事で、偉大な、貴い、大いなると言った意味があります。さらに仏説が付く場合は仏(ブッダ=覚者)つまり悟りを開かれたお釈迦さまが説かれたという意味と、真言宗のように、般若菩薩という仏様の内証(境地)を説いたお経であるという解釈をする事があります。
 いずれにしましても、大いなる仏様の知恵によって悟りの世界に至る精要を説いたお経が、般若心経なのです。
 また別の言い方をしますと、大いなる知恵を完成させる心呪を説くお経と言う意味も込められています。
 後者の考え方は、般若心経全体が知恵の完成をめざす真言(仏様と私達をつなぐ真実の言葉)であると見なすものです。つまり般若波羅蜜多(知恵の完成)の心呪(真言の中でも中心となる真言)を説くお経という意味になります。
−つづく− 
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