駄菓子編
 いつか来た道の会場、中間に昔懐かしい駄菓子屋があります。
子どもの頃は唯一のそこは社交場であり、迎 賓館であったような気がします。


 当時私の記憶では、ほんのわずかな間だけ、キャラメルを三つで1円の時代があったと思います。おばちゃんに一つ欲しいと言うと、1個は50銭、三つなら1円と言われた記憶があります。

 物心がついたばかりの私には50銭という単位が、どうしても理解できませんでした。右手の指を開いて5本の指を数え、左の手を開いてまた5本の指を数える、おばちゃんは片方の手を50銭と教えてくれ、もう片方も50銭と教えてくれました。そしてたしたら1円、よけいにわからなくなってしまうのです。

 1円で三つ買えるキャラメルがバラで買うと二つしか買えない、今になって考えても、わかるようでわからないミステリーです。ただずるがしこい僕らは、友達とある日作戦を組みました。いつものようにおばちゃんにわざと説明をしてもらうのです。 そして友達はそのおばちゃんの背中に隠れ、1センチ角の紙が二つ折りになったクジがありました。それを一生懸命、太陽に透かして一等賞を見抜こうという作戦に出たわけです。でもその計画はすでにおばちゃんにはもう見破られていたのです。

 あの手この手で作戦に出ましたが、どういう訳か見破られてしまう。通称、エンマのおばちゃんと名付け、子どもながら集まってはエンマのおばちゃんの超能力について談義をしておりました。

 その駄菓子屋の空間がみろくに復活してます。中に入ると懐かしいものから、よく似てるけれども、少し違う、こんなに買っても仕方がないのになと思いつつ、懐かしさに負けて買ってしまうのです。 ちょうど5円玉や10円玉を大事に握って走って行った店先に、ぎっしり詰まった彩りの駄菓子やおもちゃの数々、うまそうな臭いにきらびやかなパッケージ、その空間で迷う子どもの頃の幸福な思い出に浸りつつ、気づけば両手に持てないくらいのお菓子を買うことになります。

 その時あなたはそっと振り返ってみて下さい。あの時の自由の時間の扉が開き、いつものようにまー君やさきちゃんがいるかもしれません。子どもだけの世界に入っていく事でしょう。

 そういえばあのおばちゃんどうしてるんだろう…。


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