いつか来た道・中華そば編
ラーメン丼の模様は何を意味している?
 「富士には月見草がよく似合う」という太宰治の名言にならえば、「ラーメンには唐草模様がよく似合 う」ということになるだろうか。ラーメンというと、唐草や龍模様が描かれたあの丼を思い浮かべる人は、少 なくないはずである。この模様、いかにも中華料理という雰囲気をかもしだしてくれるが、なぜ多くのラーメン丼につかわれているのか、ご存じだろうか。

 ラーメン丼によくつかわれる模様は、大きく分けて三つある。「唐草模様」、喜の漢字を横に二つ並べた 「双喜模様」、中国に古くから伝わる伝説の生き物である龍と鳳凰を描いた「龍と鳳凰模様」の三種類だが、 これらはいずれも、ひじょうにおめでたいことを意味している。

 唐草模様は、正確には「雷文」といい、「唐」の名があらわすように、中国でよくつかわれる。この模様 は、中国では魔除けの意味をもつ。

 日本では、節分の日に豆をまいて、鬼が家のなかに入ってこないようにと、魔除けをおこなうが、中国に も、同様の豆まきの習慣がある。ただし中国では、ぶつけるためではなく、魔物に拾わせるために豆をまく。 まいた豆を魔物が拾い集めているときに唐草模様があれば、魔物は迷路のような唐草模様のせいで道に迷い、 逃げていってしまう。唐草模様は、中国人にとっては、魔物を追い払ってくれる、ひじょうにありがたい模様 というわけである。

 双喜模様は、おめでたい「喜」の字が二つ並ぶのだから、ひじょうにおめでたい意味をもつのはいうまでも ない。

 龍は、昔は皇帝の紋章としてつかわれた絵柄で、かつては皇帝しかつかうことが許されなかったほど尊い模 様だ。それがやがて、ふつうの人たちにもつかうことが許され、丼の模様などにも描かれるようになった。た だし皇帝とまったく同様につかえるのではなく、一般庶民の場合、5本指の龍しか描くことができなかったと いう。ちなみに皇帝のつかう龍は6本指の龍だ。

 鳳凰も、日本でも京都・宇治の平等院鳳凰堂などにつかわれているように、ひじょうに高貴とされる生き物 だ。中国では、聖天子の治政のきざしとして現れると、いわれているらしい。龍と鳳凰という、中国でもっと も尊い意味をもつ幻獣2匹を描いた模様は、たしかにラーメン丼の模様のなかでも、ひときわ格調高い雰囲気 をだしている。

 これら3タイプの模様が、日本のラーメン丼につかわれるようになったのは、大正末から昭和初期にかけて といわれてる。唐草、双喜、龍と鳳凰など、おめでたい模様の丼に盛られたラーメンは、食べ物のなかでもと くに縁起がいい食べ物なのである。

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