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戦後漫画に見るビール風俗
漫画家というものは不思議な目を持っていて、風俗の変遷をすばやく感じとって漫画にしている。女性のミニスカートが再びはやり出せばすぐそれを描く。また、風俗が定着したことを見きわめてから描く場合もある。電気冷蔵庫の普及が50%を越えた時点で、冷蔵庫をテーマにした漫画が登場しだすといった具合である。風俗漫画、世相漫画というものは、想像でも展望でもなくまさに世の中に起こっていること、あるいは自他ともに認める事実を描いているのである。漫画家は、そうした人の世の生活の変わり目を実によく見つめている。

その意味でここに掲げた8点の漫画は、戦後のビールに関する風俗の出現初期をうまくとらえている。闇でビールを飲む時代(昭和22年)、ビヤホールが再開されて敗戦の暗いムードからちょっぴり開放された時代(昭和24年)、しかしまだビールは高級品の時代(昭和30年)、晩酌にビールが登場した時代(昭和35年)、屋上ビヤガーデンの登場で、女性も含めた大衆飲料になる時代(昭和39年)、ビールがお中元のナンバーワンになる時代(昭和45年)といった敗戦直後の混乱の時代から高度成長期にいたる日本人の生活風俗の変遷がそれらに描かれている。

これが続くのが、暖房の普及による冬でもビールを飲む時代、農村でもビールが普及する時代、そしてカンビールの時代となる。しかし、昭和40年代後半から出発したこれらの時代は、それぞれ出発がいつからかが非常に不明確になる。46年から55年までの漫画雑誌500冊近くを点検してみても、どの時代がさきに一般化したのか漫画の上では区別がつけにくい。

男も女も、家でも外でも、都市でも農村でも、一年中ビールが飲まれる時代となっては、もはや「ビールの…時代」は存在しなくなった。漫画のネタとして扱われることも少なくなった。テレビとか電話と同じように生活必需品の部類に近づいてきたのである。

冷蔵庫、自宅風呂、暖房器具の発達は、ビールの大衆化に大きく貢献した。しかし、大衆に冷蔵庫の中にあるビールを開けさせるという魔術をしかけたテレビのCMも大衆化促進のうえからは見逃せない。


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