今回の小林和作展は私にとって格別な思いが有ります。帰郷してまだ生活も落ち着かない頃向島在住の画家、村上選先生に連れられて小林和作先生の御自宅にお伺いする事が出来ました。
奥様も当時、御健在で快くお話を聞かせて頂きました。私が美術にのめり込む結果となったのもこの時とはっきり思っています。和作先生の想い出を話される奥様の口調はとても上品で穏やかなものが有りました。それは良家のお嬢様の口調でなく和作先生と共に生きてきた歴史が根底にある風貌だと感じたのは御会いしてわずかな時間のなかでした。
奥様とお話をしていると、ふとその後ろに何かがよぎったような感覚が何度も有りました。
不思議な感覚に襲われながら見せて頂いた何十枚ものスケッチ、一点一点に奥様が答えられるのです。これはですね、あの時確かこんな事が有ったから昭和の3年でしょうね。
確かに調べたらそのとおりなのです。和作先生のアトリエへ上がった時当時のままにそっと保存していました。筆もキャンバスもそのまま、その部屋のガラス窓をガタガタと開ける後ろ姿を見ながら解りました。あのよぎった感覚それは和作先生だ・・・
奥様を通して先生を感じました、と言うより御夫婦一体でおいでであったと気が付きました。この絵はですね、と話される奥様の言葉で人を見ずして作品を見ていた自分に恥を知りました。それが私にとってとても大きな転機になったのは事実であります。
どうか単なる技法ではなく、手法でもなく、美の構図を求め続けた小林和作の人間を感じながら今開催中の和作展に足を運んで見て下さい。和作先生の手で描かれた本物の前に立ちそっと感じて下さい。小林和作を尾道を。 |